今から考えておきたいお墓の問題、解決法は?
お盆が近づき、お墓参りの季節となってきました。
この時期になると、ふと「将来自分が入るお墓はどうしたらいい?」「いつか実家のお墓が無縁墓になってしまうかも」等、お墓の悩みが頭をよぎることはありませんか。
近年は、お墓のあり方が多様化しています。
そこで、お墓の問題について現在ではどんな選択肢があるのか、葬儀・お墓コンサルタントの吉川美津子さんに教えてもらいましょう。
1.一般墓(家墓、承継墓)
先祖代々の供養ができて子々孫々へと受け継がれる、一般的なお墓。
墓地には自治体や公益法人が運営する「公営墓地」、寺院が運営する「寺院墓地」、石材店や開発業者が開発や販売に携わっている「民間墓地」があります。
費用は、永代使用権(区画の使用権)を取得するための永代使用料が70~80万円、墓石工事費が100~150万円で初期費用のトータルは平均200万円前後、加えて年間管理費が5千~2万円ほどかかります。
寺院墓地の場合、檀家になるための入檀料が別に発生する場合があるほか、寺院の維持費やお布施等の費用もかかります。
2.永代供養墓(えいたいくようぼ)
お墓の継承者がいなくても管理者が永続的に供養してくれるシステムのことで、次のようなタイプがあります。
(1)合葬墓
ほかの遺骨と一緒に埋葬するお墓のことで、共通の参拝スペースがあり、そこでお参りをすることができます。
費用は1人分で3~30万円ほど。
一定期間(三十三回忌まで等)は個別で供養してその後合葬するタイプもあり、その場合は50万円前後となります。
(2)期限付き家墓
一般的なお墓の形をした個別墓が設けられ、契約期間中(三十三回忌まで等)は個別に供養を行い、契約期間が過ぎたら霊園内の合葬墓に遺骨が納められます。
費用は1区画で150~200万円となります。
個人や夫婦単位で使用できる1区画50~150万円程度のお墓もあります。
(3)納骨堂
遺骨を預かって安置する屋内施設。
利用期間が決められている場合が多く、利用期間が終わると合葬されるのが一般的です(利用期間は希望すれば更新が可能)。
棚式、ロッカー式、仏壇式、墓石式、自動搬送式(遺骨を納めた収蔵ケースを自動的に参拝室に呼び出すタイプ)等があり、費用は1区画で10~150万円、合葬タイプだと10~30万円となります。
(4)樹木葬墓地
墓石の代わりに樹木や花を植えて墓標とするお墓で、自然の山を墓地とした「里山型」、都市型霊園や寺院の境内に設けられた「公園型」、公園型をさらに小さくしてヨーロッパガーデンや和風花壇のように作られた「庭園型(ガーデン型)」等があります。
納骨方法にもいろいろあり、費用は1区画で20~80万円となります。
合葬タイプだと1人10~30万円となります。
(5)散骨
海や山等の自然環境に遺骨を粉砕してまく葬法です。
散骨で最も多いのは海洋散骨で、費用は5~40万円となります。
割安で継承者がいらない、自然に還れるといったメリットがありますが、お参りできる特定の場所がないため、遺族が供養に戸惑うケースもあるようです。
すでに一般墓があるけれど継承者がいない、お墓が遠方にあって管理が難しい等の場合は、「墓じまい」をすることもひとつの選択肢です。
墓じまいとは、今ある墓石を撤去して墓地の使用権を管理者に返還し、永代供養墓やお墓参りしやすい場所にある墓地等に改葬(遺骨を新たな供養先に納める)すること。
費用は墓石撤去費が1㎡あたり8~15万円、遺骨の取り出し費用が1遺骨あたり1~5万円、墓石を改葬先でも使用する場合の墓石運搬費が20~80万円、改葬先への納骨費用が1遺骨あたり1~3万円となります。
「墓じまいを検討する際は、まず最初に家族や親戚、現在の墓地の管理者、寺院墓地の場合は僧侶に相談をすることが大切です。関係者に相談せずに勝手に墓じまいを行うことは、トラブルのもとなので避けましょう」
(吉川さん)
お墓について考えることは、ご先祖様と子孫に思いをはせることにもつながります。
お盆の時期だからこそ、お墓についてじっくり考えてみることもおすすめです。
監修 吉川美津子さん
葬儀・お墓コンサルタント。社会福祉士。『アルック』代表。
大学卒業後、旅行会社勤務を経て 90年代半ばに葬儀業界に転身し、葬儀専門人材派遣会社、大手葬儀社、仏壇・墓石販売店に勤務。
駿台トラベル&ホテル専門学校葬祭ビジネスコース、上智社会福祉専門学校介護福祉科非常勤講師等を歴任。
現在は葬儀・お墓コンサルティングの第一人者として、また終活や福祉に関する講演活動や執筆、テレビ出演等で活躍中。
著書に『お墓の大問題』(小学館)、『ゼロからわかる墓じまい』(双葉社)等がある。
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