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2022年07/07
今あらためて知っておきたい「再生可能エネルギー」のこと

 ロシアのウクライナ侵攻を機に、世界中で原油や天然ガスの価格が高騰しています。

この問題を根本から解決するためには化石燃料への依存度を下げることが重要な課題であり、そのカギのひとつが「再生可能エネルギー」の導入拡大だといわれています。 

 再生可能エネルギーとは、消費しても自然界で永続的に生産されて枯渇することがないエネルギーで、二酸化炭素を排出しない、国内で自給できるといったメリットがあります。

そこで今回は環境エネルギーライターの今村雅人さんに、主な再生エネルギーの導入状況や今後の課題について教えてもらいましょう。 

 

1.太陽光発電

 太陽電池を利用して太陽光を電気に変換する発電方法。

日光が射す場所ならどこでも発電できますが、夜間は発電できない、悪天候の日は発電量が激減する等、発電量が安定的ではないというデメリットもあります。

 国内での2020年度の電源構成(発電量全体に対する発電方法の割合)※を見ると、太陽光発電の割合は7.9%でした。

これを政府は、2030年までに14~16%まで引き上げることを目標としています。

そのためには、導入ポテンシャル(発電が可能と考えられる未開発の導入対象)が大きい戸建住宅や中規模共同住宅での導入や、農地でのソーラーシェアリング(農地に発電設備を設置して農業と発電事業を同時に行うこと)の拡大が今後の課題となります。

 ※「電源構成と最終電力消費」「発電電力量の2020年度」の数値から算出。

https://www.enecho.meti.go.jp/statistics/total_energy/pdf/gaiyou2020fykaku.pdf

 

 2.バイオマス発電

 「バイオマス」とは、木くずや農業残渣(農作物を収穫したあとに残る野菜くず)、家畜の排泄物、食品廃棄物、下水汚泥等の生物由来の有機性資源のこと。

このバイオマスを燃料にして発電する方法がバイオマス発電です。

バイオマスを燃やす際に発生する二酸化炭素は植物が成長過程で大気中から吸収したものなので、大気中の二酸化炭素の総量は変わらないと考えられます。

2020年度の電源構成のうち、バイオマス発電は2.8%。

これを2030年までに5%へと引き上げることが政府の目標となっています。

そのためにはバイオマス利用率が低い食品廃棄物や農業残渣、樹木の伐採の際に切り落とされる枝・葉・根等の林地残材の利用率向上が求められます。

 

 3.風力発電

 風の力で風車を回して発電する方法で、海岸沿いや高原等の風況の良い場所で行う「陸上風力発電」と、海洋上に発電施設を設置する「洋上風力発電」があります。

2020年度の電源構成のうち、風力発電の割合は0.9%にとどまっていますが、その導入ポテンシャルは高く、特に洋上風力発電の開発が今後大いに期待されています。

政府の方針では、2030年には風力発電の電源構成を5%に引き上げることが目標となっています。

 

 4.地熱発電

 火山のマグマ熱で加熱された地下水を利用し、その蒸気と熱水の力でタービンを回して発電する方法。

日本は地熱資源量が世界第3位と豊富ですが、大型の地熱発電所の場合、運転開始までにかかる期間が10年を超えてしまうことや、調査や掘削といった初期コストが高いこと、地熱資源が国立公園や国定公園内、温泉地等にある場合が多いこと等の理由で、導入が進みにくい現状があります。

しかし開発途上の大規模発電所も多く、政府は2020年度では電源構成の0.3%にとどまる比率を、2030年には1%まで引き上げることをめざしています。

 

5.水力発電

 水が高所から低所へと流れ落ちる力を利用して水車を回し発電する方法で、2020年度の電源構成の7.8%を占めています。

すでに大規模なダム式の水力発電は開発済みで、導入ポテンシャルが高いのは河川、農業用水、工業用水、上下水道施設等を利用して発電する中小水力発電(出力が3万キロワット未満)です。

政府は2030年には電源構成における水力発電の割合を11%にすることを目標にしています。

 

 6.海洋エネルギー 

 黒潮等の海流の力で水車を回して発電する「海流発電」、潮の満ち引きの力で水車を回して発電する「潮流発電」打ち寄せる波の運動エネルギーを利用する「波力発電」、温かい海の表層水と冷たい深層水の温度差を利用する「海洋温度差発電」等があります。

現時点では研究開発段階で日本での商用化の実績はないものの、潜在的な海洋エネルギー量は2019年度の発電電力量の5~17%にあたる500~1,710億キロワット時と理論上算出されており、早期の実用化が期待されています。 

 

 再生可能エネルギーの導入は脱炭素社会の実現だけでなく、国際情勢にエネルギー供給が影響を受けるリスクを下げることにもつながります。

エネルギー問題に直面する今、再生可能エネルギーの動向に注目してみてください。

 

 

監修 今村雅人さん

 環境エネルギーライター、経営コンサルタント。

化学メーカーの設計部技師を経て現在、有限会社キーアドバンテージ代表取締役。

大学の最先端の研究やベンチャー企業経営に関する取材記事を290件以上執筆。

特に、再生可能エネルギーや水素エネルギー等、環境・エネルギー分野の取材・執筆を得意とする。

著書に『図解入門ビジネス最新再生可能エネルギーの仕組みと動向がよ~くわかる本』『図解入門ビジネス 最新 水素エネルギーの仕組みと 動向がよ~くわかる本』(以上、秀和システム)等がある。

 「脱炭素に役立つブログ(https://decarbonizationcom.wordpress.com/)」にて情報発信中。

 

 

 

RMエージェンシー株式会社

 

 

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